ここ近年、自動車や半導体、電気機器などを中心とした製造業の工場では、IoTやAIなどのデジタルテクノロジーを導入したスマートファクトリー(※)化が急速に進んでいます。そうしたなか、製品の研究開発や機械設計、生産技術・品質管理、生産設備の保全・保守・メンテナンスなど、製造業を支える“モノづくり系エンジニア”の活躍の場も、さらなる広がりを見せています。
なかでも今、とくに必要性の高い業務分野として注目されているのが、生産現場の「設備保全」です。多くの装置やシステムによって自動化・コントロールされた工場で、安定した高い稼働率と生産性を維持するためには、現場で稼働するさまざまな生産設備の保守・メンテナンスが不可欠となるからです。
そこで今回は、製造業における「設備保全」の基礎知識をはじめ、これらの業務を担うエンジニア職に求められるスキル・適性について解説します。
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「設備保全」とは、JIS(日本産業規格)が定める生産管理用語で、工場のさまざまな生産設備を安全・正常に稼働させるために、点検や修理を行うことを指します(基本的に「保守・メンテナンス」も「設備保全」と同義の業務に含まれます)。
工場の生産設備にトラブルが発生すると、稼働停止・停滞によって生産活動に支障をきたすだけでなく、場合によっては現場の作業員に危険が及ぶ可能性もあります。そうした事態を回避するために、設備保全には「予防保全」「予知保全」「事後保全」を主とする、以下3項目の基本業務が設定されています。
生産設備が正常に稼働する状態を維持するために、計画的に点検とメンテナンスを行う予防的な保全活動のこと。この予防保全には、「時間計画保全」と「状態監視保全」の2種類があります。
生産設備の部品交換やメンテナンスを定期的な計画としてスケジューリングし、時間が経過すれば、故障の有無にかかわらず実施します。
生産設備や部品の状態を適宜点検し、その状態に応じて設備の調整・メンテナンスや、部品の交換などを実施します。
生産設備や稼働システムのデータを取得・解析し、そのデータと故障の関係性(故障が発生する予兆)を見極めて行う保全活動のこと。最近はIoTやAIなどのデジタルテクノロジーを活用し、取得データから故障や不具合の予兆を数値化することで、より適切なタイミングで予知保全することが可能になっています。
生産設備の故障・生産能力や品質の低下・不良品発生など、現場でトラブルが生じた際に行う保全活動のこと。事後保全は突発的な緊急業務となるため、いち早くトラブルの原因を突き止めて解決策を導き、復旧に向けて迅速に対処することが求められます。
このように、トラブルが発生してからの事後保全はもちろん、生産設備の機能を正常に保つ予防保全や、故障を防ぐための予知保全も、生産現場の安心・安全を見守る重要な業務活動なのです。
また、日ごろから生産設備の予防・予知保全を徹底することで、工場を運営する企業としても以下のようなメリットを得ることができます。
●大きな設備トラブルの前に異常を検知できるため、稼働停止(生産活動の停止・停滞)による損失を最小限に抑えられる。
●設備のトラブルが原因で起こる品質不良の発生を防ぎ、不良品の破棄やリコールなどによる損害を抑えられる。
●安定した高い稼働率と生産性を維持することで、工場の運営・生産活動にかかるコストを低減でき、製品の品質安定・向上も図れる。
●設備や部品の耐用年数がアップし、長く安定した稼働が望める。また、故障による設備の入れ替えや、ムダな部品交換にかかるコストも削減できる。
●日常的な保全活動を通して既存設備の知見が深まり、設備のメンテナンスやリスクマネジメントに関するノウハウが蓄積できる。また、新しい設備を導入する際の運用管理やリスクの抽出にも役立つ。
以上のように、工場の設備保全に関わる仕事は、モノづくりの現場において非常に重要な役割を担っており、その業務に携わる設備保全エンジニア(保守・メンテナンス系エンジニア)のニーズも志願者も年々上昇。未経験からスタートした技術者や、異業種からの転職者も多く活躍しています。
設備保全エンジニアを目指すうえで、必ずしも専門的な知識や実務経験が必要となるわけではありませんが、以下のようなスキルと仕事への適性があれば、キャリア形成を図る上でもより優位となるでしょう。
設備にトラブルが発生した際には、工場のオペレーターや作業員に状況をヒアリングしたり、他部署に状況を伝えたり、チーム内で解決策を検討したりと、周囲のメンバーと的確に情報を共有・把握するためのコミュニケーションスキルが求められます。
突発的に発生する設備トラブルの解決策を導き、迅速に稼働を復旧させるためには、状況に応じて優先順位をつけ、臨機応変に対応する柔軟さが求められます。
設備保全では、ちょっとした不注意や見落としが大きなトラブルに発展します。点検やメンテナンスの際には、慎重を期して作業にあたることはもちろん、わずかな異音や異臭、状態変化などからトラブルの兆しに気づく注意力が求められます。
もちろん、電気・工学の知識や資格(機械保全技能士・電気工事士・設備管理士など)があればベストですが、研修や現場指導を通して専門知識とスキルを身に付けられる企業もありますので、モノづくり系エンジニアを目指している方は、ぜひチェックしてみてください。
以上、製造業における設備保全や、生産設備の保全・保守・メンテナンスを担うエンジニア職について、さまざまな視点から掘り下げて見てきました。
ここ最近は、工場のスマートファクトリー化に伴って、設備保全の業務分野でもIoTやAIテクノロジーの活用が進み、作業にかかる労力やコストも大幅に軽減されつつあります。とはいえ、デジタルテクノロジーによる保全管理は決して万能ではなく、故障・不具合が発生した際の事後保全や、部品の交換・調整・洗浄などの保守・メンテナンス業務は、当然ながら人間の感覚や手作業に頼らなければ行えません。
そうした意味で、製造業の未来を描くモノづくりのスマート化は、生産設備の保全・保守・メンテナンスを担う“人の手”によって支えられている── といっても過言ではないのです。そんな“工場の守り人”となる設備保全エンジニアは、今後も日本のモノづくり産業に欠かせない存在として、大きな役割を担い続けていくでしょう。
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