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半導体の基礎知識、 業界構造、トップ企業が 理解できるようになれば、 新しい景色が見えてくる!





ここまでの関連記事では、「半導体の理解に役立つ専門用語20」から、半導体の開発・量産が国家プロジェクトにもなっている半導体業界の構造や、分野ごとに高いシェアを獲得している半導体メーカーをご紹介しましたが、本記事では、最先端の技術が用いられている半導体を身近な存在に感じられる「半導体雑学」について解説します。



この記事を読んでいる方が、もしiPhoneユーザなら、いま使っているiPhoneにはどんな半導体が搭載されているのか、その機能性はどのようなものなのかを理解しておきたいものですし、身近なスマホに搭載されている最新鋭の半導体を製造するメーカー(ファウンドリー)の姿が具体的に見えてくると、熊本に開業した「JASM熊本工場」(台湾・TSMC)のスゴさが、より理解できるようになるはずです。



さらに、半導体関連の報道に際したときに、なぜ日本国家が兆単位の投資を行っているのか、熊本や千歳でこれから行われようとしている半導体製造の動きは、日本にとってどのような効果があるのかなど、エンジニアとして技術スキルを磨くことと並行して、ぜひ、半導体の業界動向や雑学についても知識を深めましょう。



半導体進化のバロメータになる「iPhone」


サクサク滑らかに動くスマホの処理スピードや、高精度な画像などの美しさ、知的な情報処理機能などに代表される高機能性も半導体が大きく関係していますが、半導体の進化をはかるうえでバロメータになる製品がiPhoneといわれています。

例えば、Apple社の最新モデルiPhone15シリーズには、過去最高スペックの「A17 Pro」チップが搭載されていますが、この「A17 Pro」には、5nmから3nmにプロセスを縮小した素子(トランジスタ)が190億も搭載されています。

下図のとおり、8年前の2016年に発売されたiPhone7のプロセスが16nmであったことからも、わずか8年で3nmへと劇的にプロセスが微小化していますし、トランジスタの数では、iPhone7=33億 ⇒ iPhone7=190億と約6倍へと飛躍的に進化していることがわかります。この勢いが今後も続けば、次世代のiPhoneに搭載されるトランジスタの数は、ゆうに200億の大台を突破することは必至でしょう。





半導体の進化が、製品の機能性向上に直結する


私たちにとって最も身近な存在であるスマホの進化には、半導体が大きく関係していますが、シリコンダイの面積が20%削減した最新シリーズiPhone15の「A17 Pro」チップでは、次のようなパフォーマンスの高効率化、複雑なアプリケーションの実行、新たなレンダリング機能などの向上が実証されています。



・ 最大30%の消費電力の抑制効果
・ 搭載カメラの画素数が4800万画素の高機能に
・ 半導体の中央演算処理装置(CPU)性能が飛躍的に向上
・ CPU性能向上により、最大で毎秒35兆回の演算が可能
・ グラフィック処理装置(GPU)の性能が飛躍的に向上
・ 高負荷のゲーム体験も、低電力で最大4倍高速化が実現
・ アルゴリズム処理機能が飛躍的に向上



この先、スマホやデバイスがどのような進化を遂げるのか期待は膨らむ一方ですが、iPhoneユーザであれば、「iPhoneはAppleの製品であることはみんな知っているけれど、iPhoneに搭載されている半導体を製造しているメーカーはどこ?」と質問されたら、淀みなく正解を答えたいところ。さて、みなさんは答えられますか?



それにしても、トランジスタ数が190億ってどういうこと?


半導体の代表キーワードとして「ダイ」「シリコンウエハ」などの用語はよく見聞きしますが、実際に一般の人が「ダイ」や「シリコンウエハ」を実際に見る機会はほとんどなく、現物を見られる人は半導体メーカーの製造現場従事者や業界関係者に限られているのが現実です。



そのため、最新シリーズのiPhone15を使用している人であっても、微細化半導体プロセスの最先端をいく3nmプロセスの半導体が搭載されていることを知らない人も多いでしょうし、手のひらサイズの駆体にトランジスタ数が190億搭載されているといわれても、「それって、何がいったいどれくらいスゴイの?」と、ほとんどの人がピンとこないのが本音でしょう。



こうしたことから、半導体がどのように製造されているか、半導体はどんなものなのかを具体的に理解している人は少なく、半導体は身近でありながらも遠い存在といえるかもしれませんね。





世界半導体メーカー 売り上げトップ10


2024年1月に速報値として発表された「Gartner」の「世界半導体メーカー 売り上げトップ10」では、2022年と2023年の半導体業界では、いずれのメーカーもプラス成長を遂げているものの、成長率の違いによって勢力図にめまぐるしい変化が起きています。



2021年、2022年の2年にわたって首位に君臨していたのはサムスン電子(韓国)ですが、半導体事業、特にメモリの売上低迷によって2023年に大幅な減収減益に陥り、サムスン電子に代わって3年ぶりにトップに返り咲いたのが「インテル入ってる?」で知られるIntel(米国)です。



しかしながら、IntelのCEO(最高経営責任者)・Pat Gelsinger氏は2022年9月に開催されたデータセンター向け機器市場で、下表で7位にランクインしているAMD(米国)が、今後「Zen 4」アーキテクチャベースのCPU「Genoa(開発コード)」と「Bergamo(同)」の発表を予定していることを踏まえ、「今後は、ライバルであるAMDにシェアを奪われていくだろう……」との見解を明らかにしています。



AMDは、コストパフォーマンスに優れたCPUやGPUを提供することで高評価を得ている半導体企業ですが、AMDが初めて商標登録をしたプロセッサ「Athlon」によって、Intel 5%ものシェアを奪い取ることに成功。さらに、コストパフォーマンスに優れたプロセッサの開発・販売によって成長を遂げたAMDは、CPUの市場シェアでもIntelのシェアを奪い、50.7%もの市場シェアを獲得するにいたったのです。



半導体業界を席巻してきたガリバー企業のIntelが脅威に感じているAMDは、現時点では世界の半導体メーカートップ10の7位に甘んじているものの、今後、この順位はいつ、どのように入れかわってもおかしくないほどの苛烈な競争が、水面下で繰り広げられているのです。





日経平均株価が史上初の4万円を超えたのは、半導体の影響?


さらに、「世界半導体メーカー 売り上げトップ10」で、勢力を急拡大させた存在が米国のNVIDIA(エヌビディア)です。NVIDIAは、2020年のランキングでは12位だったものの、2023年には一気に5位に浮上。



破竹の勢いともいえるこの急成長ぶりは、米国オープンAIが提供する対話型AI「ChatGPT」の登場によって世界的な生成AIブームが起き、GPUの需要が急拡大したことによりますが、もともと画像処理半導体(GPU)大手であったNVIDIAは、この勢いに乗じて米株市場で上場以来の高値を更新することになったのです。



今後も引き続き、オープンAIの需要が拡大するという見込みから、NVIDIAと技術面で連携する日本の半導体関連メーカーや、NVIDIAの正規代理店である日本の半導体商社の株価も上昇とていて、日本の日経平均株価が史上初の4万円超えを記録した背景には、こうしたさまざまな要因があいまっているといわれているのです。





国内の半導体業界の活況が見込まれるなか、最大の課題は人材!


熊本菊陽町に2月に新たに開所した「JASM熊本工場」や、2nmレベルの微細化半導体の開発・量産化をめざし、北海道新千歳に2025年春にパイロットプラントの稼働を表明したRapidus(ラピダス)など、日本国内では世界と互角に戦う半導体業界の動きが活発ですが、その一方で深刻化しているのが、半導体業界を担っていく人材の不足です。



工業統計調査によると、半導体業界で活躍していた人材の数は、1999年に約23万人を数えたとされますが、すでにコロナ禍前の2020年の段階で約17万人へ減少。そしてさらに、拡大の一途をたどる半導体業界と反比例して人材は枯渇状態にあり、国内半導体メーカー主要8社だけを見ても、今後、新たな技術者を含む人材が4万人程度必要になるという試算もあります。



日総工産では、そうした状況を見越し、「JASM熊本工場」が開所した熊本に、いち早く「日総テクニカルセンター熊本」を開設。業界のニーズに先駆けた技術エンジニアの育成拠点である「日総テクニカルセンター熊本」は、最先端の半導体製造装置を使用しており、半導体を代表とする電子デバイス系のものづくりに特化した技術トレーニングを積める場として、業界内外から大きな注目を集めています。



現場のOJTでは不可能とされる「失敗しながら学べる」という環境を構築し、短期集中育成を実現した同センターでは、「時代の先端をいく半導体業界で活躍したい」「先進の技術やスキルを身に着けて、半導体業界の最前線で活躍したい」と思っている若き人材の夢を叶える場になっています。





半導体産業復活を担う実践的スキルの育成なら、日総工産


日本国内の半導体メーカーで働く人の数が減少していることに危機感を感じた多くの大学では、半導体産業復活を担う人材の育成に乗り出していますが、座学で技術理論を数年学んだのちにOJTで実践的スキルを養う従来のスキル育成プロセスでは、短期スパンでの喫緊の課題とされている人材不足解消には結びつかないもどかしさがあります。



大学などの高等教育期間での半導体に特化した技術者の育成と並行して、産学連携の取り組みを強化する必要がありますが、同時に、すでに電子機器、トランジスタなどのエレクトロニクス分野で活躍する人材のなかには、時代の最先端をゆく半導体業界へ転職したいと考えているエンジニアもたくさんいることでしょう。



日総工産では、従来の技術者育成プロセスに対する目線や、プロセスを変えた実践的かつスピーディな技術者育成に注力しています。例えば、熊本菊陽町に2月に新たに開業した「JASM熊本工場」の近郊に、いち早く半導体を代表とする電子デバイス系のものづくりに特化した技術トレーニングを積める「日総テクニカルセンター熊本」を開設したことも、そうした取り組みのひとつです。



現在の技術スキルを活かして半導体業界に転職したい、将来的に半導体業界で活躍したい、ものづくりの最前線である半導体業界で働きたい……などの希望や夢をもつ人は、ぜひ気軽に日総工産の取り組みについて情報を収集してみてはいかがでしょうか。メーカーや業界が求める技術者育成に根ざした日総工産の取り組みついては、こちらからさまざまな情報収集できます。



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