ユーザの代弁者であり品質のエキスパートでもあるテスト・評価エンジニア | エンジニアワークス

ユーザの代弁者であり品質のエキスパートでもあるテスト・評価エンジニア

製品のベスト・プラクティスを練り上げるテスト・評価エンジニア

私たちがいつも使っているスマートホンや家電・ゲームはもちろん、クルマや航空機、電車やエレベータなどの多様な機能をもつ製品は、設計・仕様書通りにきちんと機能が作動するか、利用者の立場に立った客観的視点でテスト・検証が繰り返されています。

そうした製品や機器のシステムやソフト・ハードウェアのテスト・検証を専門とする「評価・テストエンジニア」は、「不具合(バグ)や問題の発生事由」「ユーザビリティ(使い勝手)」「実装・修正の漏れ」等をチェックするエキスパート職であり、製品や機器の品質向上を担う“ものづくり”の立役者ともいえる存在です。

自動車や家電、通信機器等の大手メーカーでは、「評価」「テスト」「検証」を専門とする部署が社内にあることが多く、そうした部署にはIT技術やソフト・ハードウェアに加え、品質管理の専門スキルを有したエンジニアが数多く在籍していますし、メーカーによっては「評価・テストエンジニア」を「テスター」や「QA」と呼ぶこともあります。※Quality Assurance =品質保証

また小規模メーカー等では、動作状況をテスト・検証する専門要員にアルバイトを雇うケースもあるほか、社内ではテスト・検証を実施せず専門業者に依頼するケースなど、企業や取り扱う製品によってその形態はさまざまです。

逆に、それだけ「評価・テストエンジニア」の活躍フィールドは広いことを意味しますが、今回は製品の品質の行方を左右する「評価・テストエンジニア」について深堀りしていきましょう。

徹底した品質テストで、製品やシステムの問題・不具合をゼロに!

これまでにない新機能を備えた家電の販売が決まったとします。その家電メーカーでは企画や設計案にそって詳細な仕様が決まり、その仕様書をもとに開発部隊や設計部隊が動き出します。

開発段階ではプログラム、回路、単体モジュールなど比較的小さなユニット(単位)の基本設計がなされいきますが、基本設計に基づいて動作をテスト・検証するタスクが「ユニット(単体)テスト」になります。同様に、モジュールやコンポーネントを結合した後に、意図した(設計)通りに動作するかどうかをテスト・検証するタスクが「結合テスト」です。

「テスター」「QA」とも呼ばれる「評価・テストエンジニア」は、製造の過程ごとにテストを実施し、その検証結果をレポーティング。開発・設計部隊はテスターからフィードバックされた内容をもとに仕様の改善を行い、チーム一丸となって品質を練り上げていくのです。

このように、製品が私たちユーザの手元に届くまでには、品質やユーザビリティを向上させるテスト・検証が何度も実施されているのですが、そのサイクルを簡単にまとめたものが下表「図①」です。

完成までに、何重にも張りめぐらされた品質検証フィルター

当然ながらシステムや製品を開発する過程では、仕様・設計段階で予期しなかった問題や不具合が発生します。

そうした問題や不具合を抽出・検証するエキスパートが「評価・テストエンジニア」なのですが、例えばテレビを購入した際の付属品であるリモコン、端子、配線ケーブル、チューナー等の周辺機器も、製造過程でいく度も機能性やユーザビリティのテスト・検証が実施されているのです。このように、私たちがふだん使っているものの機能性や品質は「評価・テストエンジニア」なくして実現しないものといえます。

そこでひとつの製品が開発されるまでに、どのようなテスト・検証が実施されているのか確認していきましょう(下図)。


こうして見てみると、ひとつの製品が、ユーザの手元に届くまでに何重ものテストが実施されていることに驚かされますね。ただし、図に挙げた例はあくまで一般的なものであり、メーカーや製造する製品によってテスト・検証の方法はさまざまです。

例えば、図の左から3つ目の「リグレッションテスト」(※Regression=「回帰・退行」)を、品質や機能性の万全を期すことを目的に各テストごとに実施しているケースもありますし、あらゆるデータを入力して不具合や問題を精査する「バリエーションテスト」 を実施するメーカーもあります。

「評価・テストエンジニア」に求められるテスト・検証ナレッジ

ユーザの代弁者として、その製品の品質を左右する「評価・テストエンジニア」は、とてもやりがいのある職種であり、大好きなゲーム関連の開発メーカーでゲームのユーザビリティを向上させたいと考えている人も多いことでしょう。
あるいは、家電メーカーで新機能を備えた家電の開発・製造にかかわり、便利な暮らしを創造したいという夢を抱いている人も多いことでしょう。

そんな多様なフィールドで活躍が期待できる「評価・テストエンジニア」には、どのようなスキルが必要なのでしょうか。


  • 製品の品質(QC)向上に根ざした基礎スキル
  • 修正・改善にかかるコストに関する基礎スキル
  • ユーザビリティを向上させるための基礎スキル
  • 実装・修正漏れに関する基礎的なITスキル
  • 問題・バグ(不具合)に関する基礎スキル

上に挙げた5つはあくまで基礎的なスキルであり、メーカーや製品の特長にそって必要とされるスキルは異なるため、「評価・テストエンジニア」の多くが業務に従事しながらスキルを高めているのが実情です。

とはいえ今日では、あらゆる製品・機器に先進技術が用いられていることから、プログラムやシステム、ソフト・ハードウェアに関する基礎スキルは必要最低限のものと言えますし、扱う製品やメーカーによっては、ネットワークやサーバに関する基礎スキルが必要になります。こうしたスキルを身につけておけば、仕事をするうえで大きな武器になることは間違いないでしょう。


  • プログラムやシステムに関する基礎スキル
  • ソフト・ハードウェアに関する基礎スキル
  • ネットワークやサーバに関する基礎スキル

それ以外にも、企業やメーカーによっては理系以外の人や専門知識がない初心者テスターを歓迎するところも多いので、めざす業界や企業によってどんなスキルが求められるのか、どんな働き方なのか、その傾向をつかんでおくことも大切なポイントになります。

評価・テストエンジニアの待遇は?

「図①」「図②」で示した通り、製品が完成するまでにいく度ものテスト・検証が実施されますが、評価・テストエンジニアとひとくちに言っても、その業務範囲や役割はさまざまです。


  1. 指示された通りに、何度もテストを実施するアルバイト的テスター
  2. 専門知識をもとに仕様書に沿ってテスト・検証業務に従事するテスター
  3. テスト・検証内容を決定し、その内容を仕様書にまとめるスキルを有したテスター
  4. テスターとして高い実績があり、マネジメントスキルを有したリーダー的テスター

【1】のアルバイト的テスターの場合、都道府県の最低賃金に基づいた(他業種のアルバイトと同額の)時給であることが一般的とされていて、学生や主婦などを雇っているメーカーもあります。

さらに、国税庁が発表した2020年の「民間給与実態統計調査結果」によると、日本人平均年収は433万円となっていますが、【2】のケースの平均年収は、日本人の平均年収とほぼ同じ400万円~500万円が多いとされています。

また、テスト・検証内容をまとめる高度なスキルを有した【3】の場合は、年収500万円~700万円以上になることもありますし、【4】の部下を束ねるマネジメントスキルと、検証業務の責任者を務める評価・テストエンジニアともなれば、その責任の重さと役割から年収が1000万円を超えることも珍しくありません。

興味深いところでは、AI技術やiOS技術等を搭載した製品を取り扱うメーカーでテスターとして実績を積んだ後に退職し、培った高い経験を武器に、退職後も同じメーカーで高単価案件の短期業務を定期的に請け負う“プライベート満喫型”のフリーランス・テスターも!

高収入をめざすなら、調整・マネジメントスキルも欠かせない

テスターの仕事は、一般的に黙々と製品のテストを繰り返し実施することが多い仕事のため、コミュニケーションが苦手な人や、好きな製品のものづくりに没頭したい人に適した仕事というイメージを抱かれがちですが、その半面、集中力や根気、客観的な視点で問題的を発見・検証する力、検証した内容をレポートにまとめるスキルなどが求められます。

あるいは、前章の最後で紹介した“プライベート満喫型”のフリーランス・テスターのように、ゆくゆくは自由度の高い働き方を選択したいと考えている人や、テスターとして得意分野を究め、将来は高い年収を得たいと考えている人は、次のようなスキルを磨いておくと有利でしょう。


  • 多様かつ必要な専門スキルを高めていく自己研鑽力
  • 部下を束ね、業務を円滑に進めるマネジメントスキル
  • 修正や改善について開発・設計部門と綿密に調整するスキル
  • ものづくりにおいて品質管理ともに重要な納期・コストスキル
  • 社内外・職域を問わない人とのコミュニケーション・スキル

こうしたスキルは評価・テストエンジニアに限らず、多くのエンジニアにも共通したスキルと言えますが、何より評価・テストエンジニアの仕事の魅力は、多彩なスキルと経験や実績を武器に、ユーザの代弁者として品質マネジメントの醍醐味を味わいながら、ものづくりに携われる点にあると言えるでしょう。

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