事業者はもちろん作業者自身も気をつけているのに、毎年一定の割合で労働災害は起きてしまいます。
例えば、建設業労働災害防止協会が発足した当時(1964年)に2405人だった建設現場での労働災害死者数は、約50年後の2015年に7分の1以下の327人にまで減少。しかし、いまだに建設現場での三大災害である「墜落・転落災害」「建設機械・クレーン等の災害」「倒壊・崩壊災害」は毎年多く発生していて、その要因はリスク(危険)に対する基本的措置不足、確認不足となっています。
こうした建設現場での災害にとどまらず、食品業界での衛生管理を怠った健康災害や、情報取扱業者のシステム障害や情報漏えい、流出など、社会に多大な影響をおよぼす災害や事故も多数発生しています。
そこで今回は、業務上で発生しうる災害や事故を防ぐための指針「リスクアセスメント」を考えていきましょう。
再生可能エネルギー(グリーンエネルギー)や、自動車のEVシフトによる“脱”ガソリン化など、CO2排出に伴う環境問題が世界的な課題となっていますが、私たちが日常的に生み出すや廃棄物にも大きな注目が集まっています。
一例として、日本の「食品ロス(食べられるのに廃棄される食品)」は570トン※1におよび、この数値は世界中で飢餓に苦しむ人々に向けた世界の食糧援助量の1.4倍※2に相当します。
※1=2019 年農林水産省による推計値
※2=2020年 環境省による推計値
そのほかにも、アザラシ、ウミガメ、海鳥等が誤食する海洋プラスチックゴミの環境問題によって、「環境アセスメント」というキーワードをよく目や耳にするようになりました。でも「環境アセスメントって何?」と質問されて、その意味を正確に説明できる人は少ないようです。
さらに「組織・人事アセスメント」をはじめ、介護・福祉現場で質の高いケアプランを作成する指針「ケアアセスメント」なども、さまざまなシーンで見かけることが多くなりました。
そこでまずは「アセスメント」の意味を理解しましょう。
アセスメント =「客観的な評価や査定で、人やものごとを評価・分析すること」
「アセスメント」の意味を理解したら、次に「環境アセスメント」「人事アセスメント」「組織アセスメント」も一緒に理解しましょう。
いくつかの「アセスメント」に付随するキーワードを理解したところで、本題の「リスクアセスメント」についてご紹介していきましょう。
「環境アセスメント」も、環境影響評価法(環境アセスメント法/アセス法)として制度化されていますが、同様に「リスクアセスメント」も「労働安全衛生法 第28条の2」によって努力義務化が定められています。
❌ 「リスクアセスメント」は、事故後に次の事故が起きないように対策を練ることではない
⭕ 事故が起きる前にリスクを抽出・発見して対策を練るのが「リスクアセスメント」である
では、「リスクアセスメント」はどのような方法で実施されるのでしょうか。その流れは大きく7つの項目に分けられます。
とはいえ、職場ごとに製造する商品や取り扱う原材料はさまざまであり、起きうるリスクの事象も異なります。そこで、厚生労働省のサイトから抜粋した下に挙げた「表1-1〜1-4」※3を参考に、みなさんの職場をイメージしながらリスクポイントの点数を見積もってみましょう。さらにそこから、改善すべきリスクの優先度を考えていきましょう。
※3 厚生労働省HP ttps://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/anzeneisei14/dl/it070501-1d.pdfより
最初に、事故が発生した場合の重篤度(災害の程度)を見積もります。一般的に、この段階で重篤度を低く見積もる傾向にあるため、災害を徹底防止する観点から、重篤度は最悪の場合を想定した評価(見積もり)が必要となります。
最初に、事故が発生した場合の重篤度(災害の程度)を見積もります。一般的に、この段階で重篤度を低く見積もる傾向にあるため、災害を徹底防止する観点から、重篤度は最悪の場合を想定した評価(見積もり)が必要となります。
次に、発生の可能性を見積もります。ここでは職場や現場全体の点数を見積もるのではなく、作業場、作業者ごとに細かくリスクを想定しながら見積もっていきます。さらに、現場の99%が表最下部の「通常の状態では災害にならない」の項目に該当していても、残りの1%の作業が最上部の「かなりの注意力を高めていても災害になる」に該当すれば、リスク発生の確率は非常に高くなります。
また、表1-2で発生の可能性と危険性または有害性に近づく頻度が「ほとんどない」に該当しても、表1-1の重篤度が「致命傷」に該当する場合は「直ちに解決すべき問題がある」と評価します。
3つ目の見積もりでは、危険性または有害性に近づく頻度は、作業の頻度とは異なることを前提とします。例えば、卓上グラインダーを手に持ち、営利な刃物と同じ状態の板金製品のエッジを研磨するとき、
① 材料が小さいものだけのときは、作業ごとに砥石に手指が巻き込まれやすいので頻度は「頻繁」に
② 材料に大きいものが混ざるときは砥石に近づかないため、巻き込まれの頻度は「時々」に
③ 作業中に砥石が割れて顔に当たれば重傷となりますが、砥石が割れる頻度は少ないので、頻度は「ほとんどない」に
「表1-1〜1-3」の表から見積もられた結果から、下数式に則ってリスクポイントを算出します。
見積もりが済み、職場のどのエリアや作業にどんなリスクが潜んでいるかが特定できたら、リスクの高い順から改善すべき優先度を決めていきましょう。
その際、表右側の「取扱基準」をあらかじめ明示(設定)しておくと、リスクの優先度の設定がわかりやすくなります。 ただし、リスク判定が「II」であっても油断は大敵です!
ここまでの流れに則って、どのリスクを改善すべきかの優先度が判明したら、次の手順に従って、職場で働く全員で情報を共有しながら、リスクを低減・改善する行動につなげていきましょう。
□どのような措置や対応を講じて、リスクを低減・改善するかを明確にする
□リスク低減・改善は、いつまでに行うか、誰が責任者になるかも明確化する
□やむを得ず大きなリスクが残留する場合はその理由を明記し、善後策を立てる
どんな職場にもリスクは存在します。そのリスクをきちんと認識し、事故につなげないための事前の対策をとることが「リスクアセスメント」であることが、理解できたでしょうか。
しかし、リスクの特定や、リスクに対する対策が練られていなかったことが原因で、残念なことに重大事故は多数発生しています。最近起きた重大災害・事故のごく一部を挙げるだけでも……。
——「リスクアセスメント」と聞くとなんだか少し難しく感じますが、「面倒くさい」「自分は大丈夫」と過信することなく、ささいなことも気づいたら放置しない……。その心がけと行動が「リスクアセスメント」なんだと考えれば、目の前の小さな課題を改善する行動に移りやすいのではないでしょうか。
事故は突発的に起きるもの。何より起きてから後悔しても、そのときはもう遅いのですから……。
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