インフラストラクチャー(Infrastructure)の略語である「インフラ」は、道路、公共交通機関、電気・ガス・水道、公共施設などの「産業基盤」や「下部構造」を意味し、これらが使用できなくなるなどの障害が発生すると、私たちの生活は成り立たなくなってしまいます。
私たちが電車やクルマに乗ることも、ガスや電気を使って料理をしたり、テレビを見たり、蛇口をひねるだけで良質な水が安定的に供給されることも、インフラ系ITエンジニアの功績によるところが大きいといえます。
最近は、日常生活の様々なシーンにデジタル化が浸透したことで、エンジニアの一分類である「インフラ系ITエンジニア」の需要が急速に高まっていますが、実は「インフラ系ITエンジニア」はエンジニアのキャリアの入口としてもおすすめの職種であるとされます。今回は、新たな社会や時代を切り開く「インフラ系ITエンジニアについて解説します。
Contents
最初に、インフラストラクチャー(Infrastructure)の略語「インフラ」に関するトリビアをご紹介しましょう。
21世紀に入る前までは「電気」「ガス」「水道」「交通」が4大インフラとして数えられていましたが、デジタル社会への移行に伴い、インターネット、サーバ、データベース、クラウドなども特定インフラのひとつとして数えられるようになったことで「通信」がインフラに加わり、今日の5大インフラは「電気」「ガス」「水道」「交通」「通信」になっています。
「3大インフラ」と称される日本の企業名を答えられますか?答えは「JR東海〈東海旅客鉄道〉」「東京電力〈東京電力ホールディングス〉」「東京ガス」になります(〈〉内は正式社名 以下ホールディングスはHDで統一)。
ひとくちにインフラ業界といっても様々な分野がありますが、主要なインフラ業界は下記の7つです(〈〉内は主な企業名)。
●鉄道業界〈JR東海などのJR各社、東急、東武鉄道、近鉄〈近畿日本鉄道)ほか〉
●航空業界〈日本航空(JAL)、全日本空輸(ANA)、日本空港ビルデングほか〉
●電力業界〈東京電力、北海道電力、中部電力、九州電力、沖縄電力、関西電力ほか〉
●ガス業界〈東京ガス、大阪ガス、東邦ガス、西部ガス、岩谷産業、エネサンスHD、日本瓦斯ほか〉
●水道業界〈栗田工業、クボタ、日立製作所、メタウォーター、オルガノほか〉
●石油業界〈ENEOS HD、出光興産、コスモエネルギーHDほか〉
●通信業界〈NTT(日本電信電話)、ソフトバンクグループ、KDDIほか〉
インフラ業界の売上高ランキングトップ10には、以下の巨大企業が名を連ねます(売上高はいずれも2024年3月期)。
●ENEOS HD
約13兆8567億円
●NTT〈日本電信電話〉
約13兆3746億円
●三井物産
約13兆3250億円
●日本郵政
約11兆9821億円
●出光興産
約8兆7192億円
●東京電力〈東京電力HD〉
約 6兆9184億円
●ソフトバンククグループ
約 6兆 840億円
●KDDI
約 5兆7540億円
●関西電力
約 4兆 593億円
●中部電力
約 3兆6104億円
こうしてあらためてトップ10の企業名を見ると、いずれも石油・エネルギー、通信、電力に関連した事業を展開する企業であることがわかりますね。ちなみに、売上高の上位に入っている「三井物産」は大手総合商社ですが、数ある商社のなかでも原油の生産権益量が群を抜いていて、国内外で再生可能エネルギー発電、火力発電、洋上風力、鉄道などの巨大な官民インフラプロジェクトを展開しています。
インフラに関する基礎知識を養ったうえで、本題のインフラ系ITエンジニアについて理解を深めましょう。
ITエンジニアは、主に以下の2つに大別されます。
・「ITインフラ」を守備範囲とするインフラ系ITエンジニア
・「情報システム」を守備範囲とする開発系ITエンジニア
両者の業務内容は共通している部分が多いのですが、業務範囲の違いは主に下記のようになります。
インフラ系 ITエンジニア
主な担当領域は情報システムの「ITインフラ」部分であり、企業の情報システムを支える基盤となるネットワーク、サーバ、データベース、クラウド、セキュリティの設計・開発・構築・運用を守備範囲とする。
開発系 ITエンジニア
主な担当領域は「情報システム」部分であり、インフラ系ITエンジニアが設計・開発・構築した「ITインフラ」を基盤とする「情報システム」を守備範囲とする。
少しややこしいので、もう少し簡潔に図説すると……
インフラ系ITエンジニア
エンドユーザ(クライアント)のニーズにそって、
ITシステムの基盤になる「ITインフラ」の設計・開発・構築等を行う
上記のITシステムの基盤になる「ITインフラ」をベースに
開発系ITエンジニア
エンドユーザ(クライアント)のニーズにそって、
ソフトウェア、アプリケーション等の「情報システム」の設計・開発・構築等を行う
インフラ系ITエンジニアと開発系ITエンジニアを専門領域ですみ分けると下図のようになります。
インフラ系と開発系の両者に存在しているネットワークエンジニアは、ここまで解説したとおり、同じ技術領域ではあるものの、下のように担当する業務範囲が異なります。
インフラ系ITネットワークエンジニア ➔ 情報システムのベースになる「ITインフラ」のネットワーク
開発系ITネットワークエンジニア ➔ 「情報システム」のネットワーク
インフラ系ITエンジニアの守秘範囲は広範ですが、大規模なインフラプロジェクトになると、ネットワーク、サーバ、データベース、セキュリティなどの各領域にインフラ系ITエンジニアを配置し、業務内容や役割を細分化することもあります。ここでは、5つのポジションをご紹介します。
サーバエンジニアが構築したサーバをベースに、ネットワークの設計・運用・保守を担います。
ネットワークエンジニアには、スムーズかつ安定したデータのやりとりを継続的に実現させるため、通信環境の信頼性を高める高度なスキルが求められますが、具体的なスキルに次のようなものがあります。
・ネットワークの設計図にそってルータ、Wi-Fiアクセスポイント、ロードバランサなどのネットワーク機器を接続するスキル
・管理ソフトウェアの導入・設定のスキル
・複数のデバイスを接続したネットワーク環境を構築するスキル ほか……。
特にネットワークでの障害が発生すると企業活動が停止する深刻な事態になりえますし、予期せぬ障害の原因特定と解決は非常に困難であるため、高度な専門性を身につけたネットワークエンジニアの重要性は、今後ますます高まっていくと予測されています。
企業の通信環境や情報システムの中核を支えるサーバ機器の設計、構築、運用管理を担当します。
サーバエンジニアは、エンドユーザ(クライアント)のシステム要件や目標に基づき、必要な機能、パフォーマンス要件、セキュリティ要件などを明確化し、効率的かつ信頼性の高いサーバ環境を構築します。
また、Webサーバ、メールサーバ、ファイルデータベースサーバなど、エンドユーザの要望にそってレスポンスを返すコンピュータシステムや、プログラムの構築・運用に従事するケースが増えていることから、Windows、Linux、UNIX等のOSに関するスキルも必須とされます。
最近は、仮想空間にネットワークを構築してクラウド上でデータを管理する企業が増えているため、クラウド関連のスキルや、サーバと密接に関連するネットワーク、データベース、セキュリティ関連のスキルも必須です。
Webシステムやソフトウェアで処理されたデータを適切に保存・管理するデータベースの設計と運用を担います。
データベースエンジニアは、エンドユーザ(クライアント)がデータの検索・共有・再利用を手軽に行えるよう、Webシステムやソフトウェアで処理されたデータを適切に保存・管理するデータベースシステムの設計・運用に従事します。
膨大なデータを整理整頓し、正確に取り扱えるようにするには多様なテクノロジースキルが求められますが、主な以下の3つのスキルが必須になります。
・OracleやMicrosoft SQL Serverなどを使用して、エンドユーザのニーズに見合った適切なデータベースの設計・開発に取り組むソフトウェアのスキル
・データベースのインフラを構築・管理するハードウェアのスキル
・アクセス権やアップなどの管理面を担う運用面のスキル
このようにデータベースエンジニアには、データの適切な管理に基づくデータベースの構築や、アクセス権管理などデータに関する広範なスキルが求められます。
また、データベースへの不正侵入や、データ流出を防ぐセキュリティ設計、定期的なバックアップ等のシステム運用など、データの整合性や安全性を保証するリスクマネジメントにも従事します。
クラウドサービスの環境構築や保守、監視を行う役割を担います。
最近は、仮想空間にネットワークを構築してクラウド上でデータを管理するエンドユーザ(クライアント)が増えていることから、クラウド関連のスキルはもとより、サーバと密接に関連するネットワーク、データベース、サーバ、セキュリティのスキルも必須とされます。
クラウドエンジニアの業務は、主に「インフラ設計」「クラウド環境の構築」「クラウド環境の運用・保守」の3つに分けられます。この3つの業務を遂行するうえで必要な技術スキルに、仮想マシン、ストレージ、ネットワーク、セキュリティ、クラウドベンダーが提供するツールなどがあります。
また、クラウドに問題が発生して保管したデーター取り出せなくなるとビジネスに深刻な支障が生じるため、事前にあらゆるトラブルを想定しながら、クラウド環境を安定稼働させるためのリスク対策を講じる必要があります。
現在主流のクラウドサービスには「AWS(Amazon Web Services)」「GCP(Google Cloud Platform)」「Azure(Microsoftのクラウド)」とされ、Amazon、Google、Microsoftのビックネームによる寡占状態にありますが、この3つを含めて現在のところクラウドに関連したサービスは700以上におよぶといわれています。クラウドに関連した技術は年々進化し続けているので、常に最新の技術トレンドをキャッチし続けることも重要です。
システムやネットワークの設計・運用を通じて、サイバー攻撃から企業のデータやビジネスを守る役割を担います。
特に昨今、悪意ある者のサイバー攻撃による情報漏洩や身代金要求などが社会問題になっていることから、セキュリティエンジニアへのニーズがかつてないほど高まっていて、既存システムのリスク評価や、ファイヤーウォールなどのセキュリティ対策の立案・設計・実装などのコンサルティング、セキュリティ運用レベルの管理業務、セキュアプログラミング、暗号、電子署名など、セキュリティに関連した広範かつ最先端のスキルが求められています。
また、セキュリティエンジニアは、ネットワーク、サーバデータベース、OSなど、通信インフラを構成するシステムやアプリケーションなど、ITに関する幅広いスキルも必須とされます。
インフラストラクチャー(Infrastructure)は「産業基盤」のほかに「下部構造」の意味をもちますが、インフラ系ITエンジニアは「下部構造」の意味からも、その存在がマスコミなどで脚光を浴びることは少なく、人々の便利で快適に暮らしを見えないところを技術で守る「縁の下の力持ち」的存在です。
しかし、存在は地味ながらも、高いスキルを有するインフラ系ITエンジニアほど、大規模なインフラプロジェクトに招聘される機会が多く、そうしたプロジェクトに参加するインフラ系ITエンジニアのなかには、多様なエキスパートとタッグを組み、プロジェクトを遂行する花形エンジニアとして、プロジェクトメンバーから憧れの目を向けられるケースも珍しくありません。
そうしたエンジニアは、要件定義や設計などの上流工程経験だけでなく、エンドユーザ(クライアント)のニーズを最大限汲み取り、そのニーズを技術で具現化する総合的な能力を有することが多いといえます。何より、彼ら、彼女たちに共通していることは、特定技術に縛られることなく、技術トレンドや市場の動向に関する情報収集に努めながら知識や知見をブラッシュアップし、自らの評価や希少性を高めていることにあるようです。
その一方で、最近はネットワーク、サーバ、データベース、セキュリティなどの高度な技術を有したインフラ系ITエンジニアの活躍フィールドは非常に広がっていて、未経験からでも得意なスキルがあれば挑戦しやすく、エンジニアとしてのキャリアの入口とにもなっています。
—— インフラ系ITエンジニアとして将来活躍したいと考えている人は、今回ご紹介した様々な技術領域のなかから自分が武器にしたい得技術領域に狙いを定め、最新の技術動向や業界研究に励みながら、武器になるスキルの向上に努めてくださいね。
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