第4次産業革命と製造業の未来《Part.1》 | エンジニアワークス

第4次産業革命と製造業の未来《Part.1》
~技術革新で社会経済や私たちの暮らしはどう変わる?

皆さんは「第4次産業革命」という言葉を見聞きしたことがありますか?
産業革命といえば、まず18世紀にイギリスで起きた技術革新を思い浮かべる人が多いと思いますが、その後も産業革命は世界各国で第2次・第3次と巻き起こり、現在は第4次産業革命の黎明期にあるとされています。


過去に起きた3つの産業革命は、飛躍的な産業技術の改革によって、社会の仕組みや人々の暮らしに大きな変化と発展をもたらしました。同じように、今まさに進行する第4次産業革命においても、世界の社会経済システムや企業活動、私たちのライフスタイルや働き方など、世の中のあらゆる面に大きな変化をもたらそうとしています。もちろん、本サイトのテーマであるモノづくり産業や製造業も例外ではなく、その業界構造や労働のあり方にも、かつてない変革が迫りつつあるのです。

そこで今回は、第4次産業革命によって何がどう変わるのか、そして、製造業界の現場や働く人たちにどのような影響をもたらすのか、2回の連載シリーズで詳しく解説していきます。

まず第1回目の《Part.1》では、これまでの産業革命の歴史とともに、第4次産業革命の基礎知識や世の中に及ぼす影響ついて見ていくことにしましょう。

第1次~3次産業革命の歴史

では、これまで世界で起きた第1次・第2次・第3次産業革命の歴史と、それによって生じた世の中の変化について見てみましょう。


【第1次産業革命】

「近代工業の幕開け」ともいわれる第1次産業革命は、18世紀後半のイギリスで起きました。その代表となる技術革新が「紡績機の発明」と「蒸気機関の改良」です。これにより、モノづくりが人の手から機械へと移行する「工場制機械工業」の導入が進み、イギリスの主要産業であった綿織物や、鉄をはじめとする工業製品などの生産性が大きくアップ。また、蒸気機関を活用した鉄道や蒸気船も開発され、より多くの人やモノを効率的に輸送できるようになりました。

【第2次産業革命】

19世紀後半に起きた第2次産業革命では、主要エネルギーが石炭から電気・石油へと移行し、重工業の機械化や輸送手段の変革がさらに加速。第1次産業革命で工業が躍進したイギリスだけでなく、欧米諸国でも産業技術の革新が進み、アメリカが世界の覇権国家になるきっかけにもなりました。

【第3次産業革命】

20世紀半ば~後半にかけて起きた第3次産業革命は、コンピューターの台頭による革命ともいわれています。コンピューターの導入によって工場での機械自動化が進み、より効率的に製品を大量生産できるようになりました。また、運搬や溶接などの産業ロボットが登場し、人間が行っていた単純作業を自動化するなど、従来の産業構造や労働環境にも大きな変化をもたらしました。そのほか、インターネットによる情報技術の発達も、第3次産業革命の特徴のひとつとされています。


第4次産業革命とは何か?

そして、いま世界で進行している第4次産業革命とは、IoT・AI・ビッグデータを用いた技術革新のことを指します。これにより、過去の産業革命がもたらした諸産業の機械化・自動化へのアプローチが、世の中のあらゆる場面で、高次元かつ飛躍的に進むと予想されています。

日本語で「モノのインターネット」とも呼ばれるIoT(Internet of Things)は、身のまわりのさまざなモノがインターネットでつながり、個々に情報交換することで、社会経済や人々の生活に利便性をもたらすことを意味します。そして、IoTを通して集められたビッグデータ(ネット上の膨大なデータ群)をAI(人工知能/Artificial Intelligence)で分析することで、より複雑な高レベルの作業を完全自動化することが可能となるのです。

ちなみに、第4次産業革命の発端となる取り組みとして、2011年にドイツが打ち出した技術戦略「インダストリー4.0」が上げられます。これはドイツ政府がIoTの普及に向けて発表した国家プロジェクトで、第4次産業革命の潮流を世界に巻き起こした起点と位置づけられています。

その後、2016年1月にスイス・ダボスで開催された世界経済フォーラム(World Economic Forum)の年次総会で、『第4次産業革命への理解(Mastering the Fourth Industrial Revolution)』が主要テーマとして取り上げられ、欧米先進国を中心に第4次産業革命への注目が一気に高まりました。そして近年は、日本を含めたアジア諸国でも、第4次産業革命を意識した国家レベルの戦略や関連の取り組みが進められています。

第4次産業革命によって何がどう変わる?

では、第4次産業革命の核となるIoT・AIなどのテクノロジーによって、日本社会や私たちの暮らしはどう変わるのでしょうか。すでに普及しつつある技術・サービスを含めて、主なものを項目ごとに見ていきましょう。

【社会・教育】
  1. デジタル社会に対応する人材の育成や、個々人のITスキル・リテラシーが求められるようになる
  2. 小学校でのプログラミング教育の義務化や、STEM(科学・技術・工学・数学の教育分野)教育の推進など、デジタル社会を見据えた若年期からの教育が必須となる
  3. さまざまなインフラサービスがIoT・AI化されることで、交通・気象・災害などのスポット情報がリアルタイムに発信され、インフラ設備の故障や停電などの支障も早期に予測できるようになる
【ライフスタイル】
  1. 離れた場所やスマートフォンから確認・操作できるIoT家電(掃除ロボット・エアコン・照明・冷蔵庫・セキュリティシステムなど)の導入により、家事の負担軽減や生活環境の快適化が図れる
  2. 在宅ワーク、ネットショッピング、ネットバンキング、オンライン医療・公共サービス、オンラインスクール・映画視聴サービスなどを利用することで、家から出なくても仕事や生活ができる
  3. 交通インフラや車のIoT・AI化により、運転操作が不要の完全自動運転で、目的地まで移動できるようになる
【ビジネス・労働・雇用】
  1. ビッグデータを分析することで、これまで大量・画一的に提供されてきたサービスがカスタマイズされ、個々の顧客に沿ったアプローチが可能になる
  2. インターネットとつながったテレワークの普及により、職場にいなくても業務が遂行できる
  3. 無人レジや事務作業ツールの導入により、人手不足の解消や労働コストの削減が図れる
  4. AI化できる職種の需要が減る一方で、クリエイティブな仕事や技術職の需要が増え、労働者間の格差が拡大する恐れがある

製造業へのインパクトを認識する海外企業

このように、第4次産業革命による世の中の変化は多岐に及びますが、産業分野(業界・業種)という視点で見ると、やはりIoT・AIと関わりの深い情報通信業に大きな変革がもたらされることは間違いないでしょう。

総務省が国内外の企業(アメリカ・イギリス・ドイツ・日本)を対象に実施した国際調査(2017年)でも、『第4次産業革命によって変革がもたらされると思われる業種』に関する質問に対して、各国とも情報通信業を上位に挙げていることがわかります(https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/h29/pdf/n3200000.pdf 図表参照)。

さらに同調査で注目されるのが、アメリカ・イギリスでは製造業(自動車以外)、ドイツでは製造業(自動車)を挙げた企業が非常に多い点です。日本企業の回答が情報通信業に一点集中しているのに対し、他国企業は情報通信業を起点としつつも、すでに製造業全般への大きなインパクトを認識しているのです。

このように、これまで日本における第4次産業革命は、情報通信業に比較的閉じた革命と捉えられてきましたが、第4次産業革命をリードするアメリカ・イギリス・ドイツの流れに続き、その影響は製造業を中心に、今後さまざまな産業分野に及ぶことは確実と見られています。事実、ここ数年は日本国内でも、国や製造業界で第4次産業革命にシフトする取り組みが加速しており、現場の労働体制や業界構造にも大きな変化が起き始めています。

── では、第4次産業革命による技術革新は、製造業の企業や働く人たちの将来にどのような影響を及ぼすのでしょうか。次回の《Part.2》では、国や製造業界が取り組む具体的な事例を紹介しながら、そのメリット・デメリットを含めて詳しく見ていきたいと思います。



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