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家電などの様々な 製品が進化し、 便利になったのは 組込みシステムのおかげ!





「組込み」とい日本語には、「全体の中に、一部の“あるもの”を入れる」という意味があります。 この意味から「組込み技術」という言葉は、ひとつの製品に組み込まれた一部の技術となんとなく想像できますが、実は、私たちの暮らしのなかの電気を使って動くもののほとんどに、組込みシステム(Eembedded System)が活用されています。具体的にどのようなところに使用されているのでしょうか。一部をピックアップしてみると……



■自宅 →  エアコン、テレビ、冷蔵庫、洗濯機、炊飯器、電子レンジ、掃除機、電動自転車など
■デジタル機器 →  スマートホン、タブレット端末、ウェアラブルデバイス、デジタルカメラなど
■オフィス →  プリンタ、多機能コピー機、 スキャナー、通信端末などのPC周辺機器など
■病院 →  血圧計、心電計、レントゲン、CTなどの医療機器や理化学分析機器など
■街 →  自動車、カーナビ、信号機、エレベータ、ATM、自動販売機、駅の券売機、カラオケ機器など



びっくりするほどたくさんの製品や機器に組込み技術が活用されていることがわかりますが、このほかにも、AI、ロボットをはじめ、デジタルデータをもとに業務を管理するスマートファクトリーなどの製造現場や、組織や生産業務すべてをデジタル化で変革するDX(デジタル・トランスオートメーション)、AI技術を活用した防災システムなどの多領域で組込み技術が活用されています。
こうした背景によって、組込みシステムのソフトウェアの開発に携わるエンジニアの需要が急拡大しているのです。



組込み技術が搭載される前は、洗濯は手間がかかるものだった


組込み技術や組込みシステムの本題に入る前に、身近な家電のなかから組込み技術が搭載されている洗濯機を取り上げていきましょう。

現在、多くの家庭で「スタート」のスイッチを押すだけで脱水から乾燥までを自動で行う「全自動洗濯機」を使用していますが、全自動洗濯機が現在のように普及する前は、洗濯槽と脱水槽の2槽に分かれた「二槽式洗濯機」が主流でした。二槽式洗濯機の使い方は主に下の6工程で、工程ごとに人の手を必要とします。

① 洗濯槽に洗濯物と洗剤を入れ、洗濯槽のタイマーをセットして10分ほど洗浄する
② 洗浄後の洗濯物を手作業で脱水槽に移し、タイマーをセットして脱水する
③ 脱水した洗濯物を、再び洗濯槽に手作業で戻す
④ 洗濯槽に柔軟剤を投入し、タイマーをセットして5〜7分ほど流水ですすぐ
⑤ すすいだ洗濯物を脱水槽に手作業で移す
⑥ タイマーをセットして、洗濯物を脱水槽で3分ほどまわして水気を切る
⑦ 洗濯物を物干しに干す……


二槽式洗濯機は、洗濯槽と脱水槽のスイッチ(回路・ハードウェア)が別になったシンプルな構造で、動かしたい槽の機械式タイマーを操作して時間を設定すると、槽(モータ)が回転するタイプが主流でした。

現在は、二槽式洗濯機ではあるものの洗い・脱水・すすぎが同時進行できるうえ、すすぎまでを自動運転する給水オートストップ式のものも発売されていますし、ネットで「二槽式洗濯機」と検索すると、3kg〜6 kgタイプの二槽式洗濯機が多数ヒットします。高機能を備えた全自動洗濯機と比較すると、その圧倒的な価格の安さは大きな魅力となっているようです。



味わい深くて優秀だけど、不便なところも多い「二槽式洗濯機」


若い世代のなかには二槽式洗濯機を知らない、見たことがない……という人も多いようですが、昭和の時代に一家に一台あった洗濯機は、洗い・脱水・すすぎの各工程で手作業が必要でした。そんな二槽式洗濯機には、下のようなメリットとデメリットがあります。



【二槽式洗濯機のメリット】
◯ 丈夫で壊れにくく、安価
◯ 洗い・すすぎ・脱水の各工程の自由度が高い
◯ 洗いとすすぎが同時に進められ、使い勝手がよい
◯ シンプルな構造なので槽の手入れも簡単
◯ 1時間あたりに洗える量が多い
◯ 落ちにくい汚れに対して洗浄力が高い
◯ 脱水力が強い
◯ モーターの力が強く高速回転するので時短



【二槽式洗濯機のデメリット】
△ 横幅があり、洗濯機が大きめ
△ 槽の回転音、作動音、水道音が大きい
△ 洗濯終了まで洗濯機の近くにいないといけない
△ 洗濯物を槽に移し替える手間が必要
△ 槽の回転が早いので、衣類が傷むことも
△ 水が冷たい冬場の手作業は大変
△ 手が荒れることもある
△ 夜の洗濯は騒音問題にもなる





「二槽式洗濯機」が、いまも根強い人気を誇る理由

二槽式を愛用するユーザはいまも変わらず二槽式を使っている理由について、「タイマーをセットした瞬間から槽が回転し始め、洗濯機本来の洗浄と脱水をキビキビムダなく行うところが◎」という人や、「洗う物に合わせて洗浄やすすぎを自分好みで調整できるところがいい」など、その理由は様々なようです。



さらに現在も、汚れが落ちにくい衣類やタオルを洗濯する整備工場や美容院、さらに個人ユーザに二槽式にこだわるワケを聞いたところ……



●例えば……整備工場/メカニックが着用するつなぎには落ちにくいオイル系の汚れが付着するため、洗浄力の高い二槽式のほうが、汚れが落ちやすい。また、多くの整備工場では、メカニックがつなぎを自宅に持ち帰って洗濯する手間を減らすため、仕事終わりの清掃の時間に洗濯・脱水を同時進行できる時短式の洗濯を行い、洗濯終了後に乾燥を兼ねてラックのハンガーに掛ける方法をとっている。



●例えば……美容院/髪染めの染料などの落ちにくい汚れがタオルや前掛けに付着する美容院では、一日に大量のタオルを洗濯する必要があるため、閉店前の清掃の時間に洗浄と脱水槽を使い分けながら時短で洗濯し、洗濯後のタオルは物干し竿にかけて、翌日の営業までに乾燥させる。



●例えば……地方在住の一人暮らしの高齢者/「私ひとりなので洗濯物は少ないし、洗濯は機械任せではなく自分で細かく調整してキレイになった実感を素朴に味わいたい。二槽式は丈夫なので壊れにくいからもう20年以上使っているけど、この洗濯機が壊れても、次も二槽式洗濯機を買いたい」



●例えば……独身者用の寮に住む男性/「二槽式には槽の掃除がカンタンカビも発生しづらい、清潔、頑丈というたくさんのメリットがある。特にちょっと洗いのときに、すすぎや脱水を短めにするなど細かく調整できる点も◎  唯一の難点は音が大きいので夜の洗濯を控えなくてはならないことかな」



高機能かつ小型のソフトウェアが組み込まれた全自動洗濯機


洗濯の起源は古代に遡り、原始は濡れた布を河原の石に叩きつける方法で汚れを落としていましたが、電気の発明によって洗濯の方法は様変わりし、明治、大正時代の頃は、槽内の中央に設置されたかく絆棒を回転させる「かく絆式洗濯機」が使用されていました。その後、機械式タイマーの二槽式洗濯機を経て、1956(昭和31)年にマイコン制御を搭載した日本初のドラム式全自動洗濯機が登場します。



その後1979(昭和54)年に、世界初の自動すすぎ検知・水流制御のコンピュータ機能を搭載した洗濯機「AW-8800G」(東芝)が発売されます。下のイラストは、東芝の「全自洗濯機」のカタログに掲載されたものですが、二槽式から全自洗へ進化したことで、多くの主婦の憧れの家電になったとされています。





手洗い→かく絆式→二槽式→全自動へと進化した洗濯機


ここまで、二槽式洗濯機のメリットとデメリットなどをご紹介してきましたが、長い歴史のなかで進化し、現在は多くの人が全自動洗濯機を使用していますが、全自動洗濯機とはあえて説明するまでもなく、縦型ドラムなどのひとつの槽で洗濯・すすぎ・脱水・乾燥の全工程を自動で行う洗濯機のこと。



最近は、洗濯物の量や汚れをセンサーで感知し、洗剤・柔軟剤を自動投入する機種も登場していますが、これらの便利な機能を司っているのが組込み技術なのです。



●全自動洗濯機の構造 ハードウェア内部に洗濯機を制御するソフトウェア(ファームウェアまたはプログラム)が組み込まれ、洗浄・すすぎ、脱水・乾燥等の複数機能を自動で行う。
各工程の時間等をユーザが設定できる「マイコース」のほか、「お任せコース」では衣類の量や汚れをセンサーが感知することで、洗剤量や洗浄時間を動調整する機能が備わり、機種によっては、すすぎ検知機能やデリケートな衣類の弱脱水など様々な機能がある。このほか、外出先からスマホのアプリを操作して、洗濯機を操作できるIoT機種も家電メーカーから多数発売されている。



Embedded System = 組込み(埋め込み)システム


「全自動洗濯機」は、「洗濯機に水を注入」「洗剤を投入」「洗浄や脱水に適した回転数・速度で槽をまわす」などの工程を、洗濯機に内蔵されたマイコン=「embedded(埋め込み)システム」といわれる組込みソフトウェアのプログラムにそって自動で行いますが、洗濯機と同様に電気で作動する製品の多くには、その製品の機能を司る組込みマイコン(超小型コンピュータのようなもの)が搭載されています。



例えば炊飯器なら、ごはんの炊き具合を指定すると組込みマイコンが圧力や火加減を自動調節してくれますし、センサが床の段差を見極め、掃除が終了すると自動で充電ステーションに戻るロボット掃除機の機能も、組込みマイコンが制御しています。



さらに、産業機器などの機能や制御を司るソフトウェアも、組込みマイコンやマイクロプロセッサが司っています。身近な例では、私たちが普段利用しているエレベータの扉の開閉や目的階へのスムーズな移動もそうですし、自動販売機で飲料を購入したときに、ボタンが押された飲料を排出口に送り出し、釣り銭を計算して釣り銭口に小銭を送り出す機能も組込みソフトウェアの為せるワザ……。このように私たちの日常は、あまねく組込み技術の恩恵に浴しているのです。



CPU、マイクロプロセッサ、マイコンの関係性


「マイコン」の歴史は意外と古く、パソコンの黎明期には、8ビットのマイクロコンピュータ(Microcomputer)を「マイコン」という略称で呼んでいました。



その後、16ビットの小型(マイクロ)パーソナルコンピュータの普及に伴い、パーソナルコンピュータを「パソコン」、単一のLSI(電子回路・部品)の小型マイクロプロセッサを「マイコン」と呼び分けるようになります。しかし現在も、両者の違いは少しずつ区別されているものの、その定義は明確に定まっているわけではなく、マイクロコンピュータ(Microcomputer)、あるいはマイクロコントローラ(Microcontroller)を、略して「マイコンLP募集停止作業答え合わせと呼びます。





【マイコンとは】


MicrocomputerまたはMicrocontrollerの和製略語である「マイコン」は、様々な電気製品や機器において、その構成要素である電気回路や機械部分を制御する半導体チップのことで、与えられたプログラムにそって制御や演算を行います。マイコンは電化製品の機能を司ることからも人間の頭脳に相当します。

「マイコン」と聞いて多くの人が連想するのは、パソコン内部のマザーボード(電子回路基板)に配置された黒い正方形の筐体ではないでしょうか。「マイコン」と同義のものに「CPU」と「マイクロプロセッサ」がありますが、分類としては上図のように、大分類の「CPU」に、マイコンとマイクロプロセッサが属する関係にあります。

しかし、マイコン、マイクロプロセッサ、CPUなどの組込み技術は進化の過程にあるため、三者の関係性は現段階で厳密な定義(すみ分け)はなされておらず、技術仕様やチップ構成は混同・混在した部分が多い現状にあるようです。このように、組込み技術によってマイコン、マイクロプロセッサ、CPUの技術仕様や特性は“似て非なる”状態にありますが、ちなみにマイコン単体としては、現在のところ以下の3種に分けられています。



①ワンチップ・マイコン
……RAMやROMなどの記憶装置やCPUのような計算装置など、各種機能を搭載した小型の集積回路(ICチップ)がワンチップ・マイコンであり、IoT家電やウェアラブルデバイスに搭載されている

② ワンボードマイコン
……名前の通り、1枚のボード(基盤)上にマイコン・入出力装置・電源装置などの必要最低限の機能を搭載したマイコンのこと。ワンボードコンピュータとも呼ばれる

③ シングルボードマイコン
……ワンボードマイコンにOSを搭載した基板のこと。2012年以降に爆発的に普及し、ワンボードマイコンにOSを搭載し、キーボードやマウス、ディスプレイを接続すると小型パソコンのように動作させることが可能



家電の進化を支えたのは、女性たちの声に耳を傾けたエンジニアの英知


最後に、「マイコン」はあくまで和製略語であるため、海外のエンジニアとの会話で「マイコン」と言っても通じません。国際的な共同開発プロジェクトなどでは、そのプロジェクトでMicrocomputerを使っているのか、Microcontrollerを使っているのかを理解し、用語を正確に使う必要があります

加えて、組込みシステムの英表記「Eembedded System」の正しいヨミは「エンベデッドシステム」です。「エンベデットシステム」または「エンデベッドシステム」と言い間違える人が多いので注意しましょう。





本記事では、組込み技術の概要を理解するために身近な洗濯機を取り上げましたが、ほとんどの家事が手作業だった明治・大正時代を経て、少しずつ家事労働に自動化が取り入れられるようになり、近年ではデジタル化やインターネットの進化とともに機能性が大幅に向上しています。一説によると、全自動洗濯機、食洗機、ロボット掃除機などの登場によって、家事にかかる時間が年間150時間以上短縮されたともいわれています。

家電の進化を支える原動力になったのは、「毎日する洗濯の手間が減ったらいいのに」「洗濯物を槽に移し替える手間がなくなったらいいのに」「他の家事や育児をしている間に洗濯が自動で完了したら便利なのに」という多くの女性たちの声だったといえますが、人間の“ラクしたい欲求”には際限がないので、5〜10年後にはひょっとしたら、洗濯が終了した洗濯機のなかの洗濯物を「干す」「たたむ」、所定の場所に「しまう」という人の手を必要とする作業も、一家に一台のAI家事ロボットが代行する世の中になっているかもしれませんね。



—— 次の記事では、自動車、医療など、今後組込み技術の需要が高い業界を探りながら、組込みエンジニアに求められるスキルについて解説します。



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