〈業務系 ✕ ITエンジニア〉高い専門性と、業務の特殊性から ニーズが急拡大する 業務系エンジニアとは? | エンジニアワークス

高い専門性と、業務の特殊性から ニーズが急拡大する 業務系エンジニアとは?





これまでエンジニアリングワークスでは、様々なITエンジニアや専門技術領域についての記事を配信してきましたが、今回テーマに取り上げるのは、企業内の特定業務に使用されるソフトウェア、アプリケーション、システムを開発する〈業務系エンジニア〉です。

〈業務系エンジニア〉は、クライアント・サーバシステムやブラウザ用のWebシステム、スマホ用のアプリなど、様々なプリケーションをクライアントの要求に応じて、既存のパッケージソフトウェアとオーダーメイドのソフトウェアを組み合わせて、クライアントの情報システムの設計・開発を受託するエンジニアのこと。

こうした幅広い業務内容から「業務系エンジニア」のほかに、「業務系システムエンジニア(SE)」「アプリケーションスペシャリスト」「アプリケーションSE」とも呼ばれます。本記事では、そんな業務系エンジニアの仕事内容や特長をはじめ、業務系エンジニアの仕事の進め方、適性、年収、さらに今後求められる業務系エンジニアについて解説します。



業務系エンジニアと、システムエンジニアの違い


最初に、システム開発は、目的や用途別に下のように区別されていることを理解しましょう。



「to C」(to - Consumer)
→ 一般ユーザ向け (消費者などが使用するシステム)
「to B」(to - Business)
→  法 人 向 け (企業内で使用する業務系システム)



〈業務系エンジニア〉とは、既存のパッケージソフトウェアとオーダーメイドのソフトウェアを組み合わせて、企業の〈特定業務に密接に関連したアプリケーション〉を開発・管理する専門職です。ここでいう〈特定業務に密接に関連したアプリケーション〉とは、総務や経理などのバックオフィスに関連した人事や会計などの業務システムをはじめ、工場の生産現場、医療機器など、コンピュータで制御する「to B」の仕組み(システム)全般を指します。

これまでは「to C」と「to B」双方のシステム開発にシステムエンジニアが携わっていましたが、近年、使用するスキルや開発プロセスの違いから、「to B」 の業務系システムの開発領域で活躍するシステムエンジニアを、「業務系システムエンジニア」(以下、業務系エンジニアで統一)と呼ぶようになっています。





業務系エンジニアの仕事と、求められるスキル


法人向けのシステム開発に従事する業務系システムエンジニアには、様々なスキルと素養が求められます。ここからは業務プロセス別に求められるスキルを解説します。



プロセス① 企業の既存システムを熟知し、課題を抽出する


求められるスキル/既存システムの特性を熟知し、課題を整理する能力



業務系エンジニアは、クライアントである企業の基幹系システムの開発に取り組むうえで最初に行うべきことは、クライアントの既存システムの特性や機能性を深く理解することになります。

ヒト・モノ・カネ・情報を管理する業務用の基幹系システムには様々な種類がありますが、例えば会計システムなら、これまでコンピュータ上で取り扱っていた帳票類やドキュメントがどのような仕様・種類・形式であったか、それらが社内でどのように流通していたのか、または帳票類とドキュメントの量についても把握します。

また、システム開発がスタートする初期段階で、クライアントの担当者から既存システムの詳細について説明を受けますが、その際に担当者が説明した「企業サイドが認識している課題」とは別に、「企業サイドが気づいていない課題」についてもプロセス①でしっかり抽出できれば、その後の開発プロセスをスムーズに進めることが可能になります。





プロセス② 目的のシステムを最適化する要件分析・要件定義


求められるスキル/顧客(企業)との折衝力・提案力



工程①で抽出した課題を踏まえ、クライアントの要求をヒアリングし、どのようなシステムにするかを決めていきます。このプロセスが要件分析・要件定義になり、業務系エンジニアはヒアリングした内容から搭載すべき機能を明確化し、クライアントと新たなシステム像を共有します。

要件分析・要件定義の最大の目的は、これから開発するシステムには何が必要なのか、どんな仕様にしたら最適なのかを明確にすることになりますが、ここで注意したい点は、「開発サイドとクライアントサイドの認識のズレを徹底的に排除すること」になります。

もし双方に「認識のズレ」があると、クライアントが満足するシステムにならないリスクがあり、そうなった場合は修正・改善に伴うスケジュールの遅延、開発工数増加によるコスト増などが発生します。そうした事態を防ぐためには、プロセス①で抽出した「企業サイドが気づいている課題」と、「企業サイドが気づいていない課題」を提示しながら、クライアントの要求を高いレベルですり合わせていくことも有効な方法のひとつになります。

企業や開発するシステムによって様々なケースがありますが、業務系エンジニアは常に様々な工夫を凝らしながら、技術的観点はもちろん、コスト、スケジュール等の要素を加味し、クライアントの要望をひとつずつ吟味・検討する素養が求められます。こうした点から業務系エンジニアには折衝力・提案力を兼ね備えた高い交渉(コミュニケーション)力が求められます。





プロセス③ 基本設計・内部設計で各機能と全体を可視化する


求められるスキル/ドキュメント作成力



「要件分析・要件定義」と「詳細設計図の作成」の間に位置する「基本設計・内部設計」のプロセスでは、工程②で分析・定義した要件に基づき、それぞれの機能が「何をどのように実現するのか」などを明確にし、システム全体の機能を可視化します。

このプロセスでは、要件定義書をもとにシステムの「機能一覧」「機能の関連性」「画面レイアウト」「業務・データフロー図」など、そのシステムを使用する人が作業する部分の基本設計をオフィスソフトなどを使って作成し、そのシステムを使用する人には見えない「機能別処理フロー」「処理項目設計」などの内部設計もあわせて作成します。

また、これまでは顧客のサーバ上にアプリケーションを導入してシステムを構築するケースが多かったのですが、最近はクラウドにシステムを構築するケースが多くなっている点から、クラウド環境上のサーバ設計・構築、ネットワーク整備などについても設計段階で明確にします。





プロセス④ クライアントとチームメンバーへのレビュー(プレゼン)を実施


 求められるスキル/プレゼンテーション力



「基本設計」と「内部設計」が完成した後のプロセス④で、クライアントと開発チームのメンバーに、レビュー(プレゼンテーション)を実施します。このプレゼンにおける最大の目的は、クライアントにシステムの仕様を理解してもらうことになるため、可能な限り難解な専門用語を使用せず、クライアントの経営層にもしっかり伝わるわかりやすい説明に気を配ることが重要です。「新たなシステムによって実施される業務内容」「それぞれの機能性」……に関する気配りに満ちたわかりやすい説明が、結果としてクライアントの承認を得る確率を高めます。

またプレゼン後に、レビュー時に出た意見や認識のズレなどを基本設計、内部設計に吸収・修正し、システムの機能性や全体像をあらためて俯瞰することも業務系システムエンジニアの職責にあたります。このように「枝」や「葉」などの細かな機能性だけに目を配るのではなく、「木」に該当する全体像や、見えにくい「根」の部分にもしっかり目を向けられる業務系エンジニアほど、評価が高くなります。





プロセス⑤ システムの詳細設計図を作成する


求められるスキル/プレゼンテーション力、プログラミング力



基本設計・内部設計が決定したのちに作成するのが「詳細設計書」です。「詳細設計書」は目的やシステムの仕様によって多様な作成方法がありますが、基本的な設計書に「クラス図」「モジュール構成図」「シーケンス図」「アクティビティ図」の4項目があります。

「詳細設計書」を作成するプロセスでの注意点は、「開発チームの誰が見ても理解できるよう細かい部分まで落としこむ」「図や表を用いた理解しやすい仕様にする」「説明(テキスト)はシンプル・簡潔にまとめる」「誤解を招かないため、あいまいな表現は避ける」などになります。

「詳細設計書」は、開発に携わるシステムエンジニアやプログラマ向けの指示書的役割を担うため、どうしても専門用語が多用されがちですが、基本設計・内部設計やプレゼン時と同様に、リスクのタネを極力排除するためにも、誤解や勘違いしやすい表現や指示を排除する必要があります。



プロセス⑥ 開発フェーズ


求められるスキル/豊富な経験則、チームマネジメント力



プロセス⑥からは、コーディング、テスト、リリースのプロセスで「クライアント✕業務系エンジニア✕プログラマ」が協働して本格的にシステム開発が進められていきますが、品質管理や情報セキュリティを担うエンジニアや担当者と協働することも多いため、業務系エンジニアはクライアントと様々な専門職の架け橋的存在(潤滑油)としての役割が求められます。

開発フェーズでは、SEやプログラマーが、詳細設計書にもとづいて所定のプログラミング言語でコーティングを行い、プログラムを作成していきますが、スケジュール通りにチームが円滑に業務をまわすためのキホンは、クライアントとプログラマの間に立つ業務系エンジニアの仕事の進め方に大きく左右されるといってよいでしょう。

このほかにも、パーツ間のデータの受け渡しや画面遷移の「結合テスト」や、クライアントサイドに立った「全体テスト」、さらに、納品後のシステム運用についてのレクチャーなども業務系エンジニアの職責になります。こうした幅広い業務領域から、高いチームマネジメント力と経験則を有した業務系エンジニアほど、クライアントやチームから信頼され、円滑に業務を推進する旗振り役になると言われています。





業務系エンジニアの報酬


ここまで、業務系エンジニアの一般的な業務内容を見てきましたが、思わぬトラブルが生じることもあるシステム開発では、トラブルを未然に防ぐために業務系エンジニアは細部までチェックを怠らず、スケジュール通りに進むようあらゆることを調整しなくてはなりません。
このように、テクニカルスキルだけでなく、折衝力・提案力、プレゼンテーション力、チームマネジメント力、豊富な経験則など、様々なスキルを有した業務系エンジニアほど高い評価を得ることになりますが、そんな業務エンジニアの収入には、現時点では「一定の相場」というものはありません。



これはなぜかというと、次にあげた様々な要因によるためです。
●クライアントである企業規模によっても収入が異なることが多い
●システム開発は長期におよぶことが多く、リリース後を含めた長期スパンで、どれだけ業務改善に貢献できたかによって報酬が決まることが多い
●年単位のスパンで継続的に業務を効率化することが求められることが多い



業務系システムエンジニアの募集広告をのぞいてみると


システムエンジニアやプログラマはパソコンに向かって黙々と作業する……という一般的なイメージがありますが、業務系エンジニアには、ときに経営層と異なる意見を進言することもありますし、チームをまとめあげていく能力が評価の対象になることも多いため、高いテクニカルスキルと意欲的な人間力の双方を持ち合わせた人材ほど、高い年収を得ていることになります。

とはいえ、業務系システムエンジニアをめざす人にとっては、だいたいの相場が知りたいのも本音でしょう。

実際に業務系エンジニアの人材募集広告を見ると、フリーランスの業務系エンジニアを募集する様々な広告がヒットします。月収には幅がありますが、共通している点は、法人向けシステム開発の基本設計から運用保守までの業務経験に富んだエンジニアほど優遇されている点になります。また、フルリモート、月に数度の出社などを募集要件とするフリーランスの業務系エンジニアであっても、経験が豊富な人ほど高い報酬を得ること可能になっているようです。一例をあげてみましょう。



●金融系システムのツール開発業務
 月収50万円~ (既存システムの改修経験者優遇)
●官公庁向けシステム開発業務
 月収65万円~ 75万円(官公庁案件経験者優遇)
●業務システムのテストリーダー業務
 月収50万円~ 55万円(40歳以上可能・経験者優遇)
●帳票アプリの詳細設計開発業務
 月収70万円~ 75万円(40歳以上可能・経験者優遇)
●セキュティ系のシステム開発業務
 月収80万円~ 150万円(セキュリティ経験年数5年以上)



業務系エンジニアの収入には、現時点では「一定の相場」はないとされているものの、ネット上では多くの業務系エンジニアの募集がヒットし、そのいずれもが高い報酬になっています。



今後、最も求められるのはホワイトハッカー的業務系エンジニア!


今回の記事でご紹介したとおり、業務系システムエンジニアは業務の効率化を目的に業務用システムの開発に特化したエキスパートですが、ニーズが急拡大し、収入を押し上げている背景には、大きな社会問題になっている「ランサムウェア※」も大きく関係しているといえるでしょう。
   ※ランサムウェア = 感染するとパソコン等に保存されているデータを暗号化して使用できない状態にしたうえで、そのデータを復号する対価(金銭や暗号資産)を要求する不正プログラム(警視庁のHPより)





日本国内でもハッカーが企業や組織にサイバー攻撃を仕掛け、データ窃取やシステムダウンを盾に身代金を要求する「ランサムウェア」の脅威が報じられていることから、多くの人が「ハッカー」の意味を「企業や官公庁のシステムに不正に侵入し、情報を窃取する人」「システムダウンなどを盾に組織に身代金を要求する悪意ある人」と解釈していますが、実は「ハッカー」の呼び名は本来次のような意味をもっていました。



●ハッカー = コンピュータの高速処理をフル活用して、最小の手間とコストで最大の結果を出す高度なテクニック有したエンジニアの呼び名



ハッカーの本来の意味が変化したことで、最近は次のように「ブラック」「ホワイト」をつけることで、ハッカーの意味を使い分ける方法が市民権を得ています。



●ブラックハッカー = サイバー攻撃などの不正行為を行う悪意あるハッカー
●ホワイトハッカー = 悪意あるハッカーに、技術で対抗する正義のハッカー



—— ハッカーの本来の意味である「コンピュータの高速処理をフル活用して、最小の手間とコストで、最大の結果を出す」という高度なテクニカルスキルと素養で、企業のシステム開発とセキュリティ対策を支えるホワイトハッカー的な業務系エンジニアの活躍に、産業界から大きな期待が寄せられています。

同時に、ブラックハッカーを寄せつけないためのセキュリティ・テクニックを有し、万が一、攻撃に遭ったときにも的確にブラックハッカーと対峙する高度なノウハウを有したホワイトハッカー的業務系エンジニアが、今後は企業にとって必要不可欠な人材になるといってよいでしょう。



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