「保守」「保全」「メンテナンス」の違いと、業務のすみ分けを理解しよう | エンジニアワークス

「保守」「保全」「メンテナンス」の違いと、業務のすみ分けを理解しよう

コロナ禍による製造業サプライチェーンへの影響により、日本の自動車業界も半導体や部品供給不足によって、いく度と生産停止を余儀なくされましたが、そうしたなかでもトヨタ自動車は過去最高の営業収益、営業利益を計上(2022年3月期通期決算)。この業績はコロナ禍前にさかのぼっても過去最高とのことで、強い逆風をもろともしないトヨタの“強さ”をあらためて実証するものとなりました。


ご存じの通り、トヨタの生産現場では徹底的な“カイゼン”がなされていますが、この“カイゼン”に加え、正常稼動している機械や設備に対しても徹底的に行う「予防保全」こそ、その“強さ”の源泉(パワー)ともいわれているのです。


予算や人員等の理由により、設備や機械専門の保守エンジニアセクションが社内になく、不具合が発生するたびに専門業者に依頼して修理してもらう中小・零細のものづくり企業やメーカーも実際のところ多いのですが、トヨタをはじめとする日産、ホンダなどの大手自動車メーカーには「保全マン」と呼ばれるエキスパート職が在籍する部門が配置されています。これは、いかなる緊急事態下においても安定的に自動車を生産してお客様にお届けするといった姿勢によるものといえますが、自動車メーカー等の大手ものづくり企業では、会社をあげた「保全マン」の育成とともに、「予防保全」のエキスパートが、全国の工場や生産部門で多数活躍しています。


「事後保全」「予防保全」「予知保全」の違いとは?

こうした自動車業界の「保全マン」と同じく、さまざまな業種の工場や生産現場で稼動する設備・機械・産業ロボット、オフィスビルやマンション・施設などの電気設備・空調設備・ボイラー設備が安定的に稼動している陰にも「保守・メンテナンス技術者」が活躍しています。さらに、電気やガス、水道が安定供給され、信号が24時間正常に動いている陰にも、保全エンジニアの活躍が欠かせません。


保全エンジニアはあらゆるシーンで活躍するメンテナンスのエキスパートといえますが、注意したいポイントは「保全エンジニアは壊れたときに現場に駆けつけて修理をする人ではない」ということ。


「保守」「保全」「メンテナンス」の用語は、多くの現場で「事後保全」「予防保全」「予知保全」の3項目に分け、厳密に業務内容がすみ分けされているのです。



■「事後保全」= 機械や設備が作動しなくなった、システムダウンした、誤作動等の突発的トラブルが発生した……といった際に保全エンジニアが修理にあたり、もとの状態に戻す業務。

■「予防保全」= 事前の点検・検査で事故やトラブルの予兆を察知し、機械やシステムが安定的に作動するよう、保全エンジニアが計画的に部品等を交換する業務。

■「予知保全」= 定期的に行う「予防保全」とは作業内容が異なる。機械・設備・システムに取り付けた特殊なセンサーから取得した稼動状態のデータを分析することで、故障・障害ゼロをめざす業務。



また、「保守」と「メンテナンス」は次のような意味合いやシーンで使われることが多いので、こちらも理解しておきましょう。



■「保守」= 「保全」と同じく正常な状態を保つための業務を指し、修理・修繕・整備・交換・補充などの業務を「保守点検」と総称することが多い。

■「メンテナンス」= 「保守」と同じ意味合いで使用されるが、最近はネットワーク、コンピュータシステム、情報通信システムなどの保全業務で使用されることが多い。


脅威(リスク)を排除する保全の指標(ものさし)

さらに、「保全」業務は単に機械・設備・システム等の安定的かつ正常な稼動を支える業務にとどまらず、最近では、経営上の脅威(リスク)を排除する指標(ものさし)としても活用されています。


経営上の脅威(リスク)を排除する保全の指標(ものさし)

・「品質保証リスク」体系的にアプローチして品質や精度を担保する指標

・「人材不足リスク」専門スキルの継承や後継者不在問題を解決する指標

・「災害・事故発生リスク」正常・異常の判断基準を定量的に定める指標

・「環境負荷リスク」複合的かつ効率的な業務で環境負荷を低減する指標



ロボットやAIに代わることのないヒューマン・スキル

デジタル新時代を迎えたいま、多くの製造現場や工場でRPA(ロボットによる業務自動化)、IoT(モノのインターネット)、AI(人工知能)、ロボット、DX(デジタルトランスフォーメーション)などの新技術が採用されています。


これらはすべて最新技術によるところが大きいため、トラブルや障害が発生したときに保全にあたるエンジニアにも高度なスキルが求められることになります。さらに、電気設備の保全業務であれば、電子・電気工学、シーケンス制御(PLC)のスキルなど、従事する保全業務にそった専門知識が必要とされます。


鍛えたいヒューマン・スキルと、改善したい日常習慣

人間の五感や経験則をもとにしたヒューマン・コミュニケーションは、IT技術、ロボット、AI がどんなに進歩しても取って代わられることがない点から、保全エンジニアのエキスパートとして活躍したい人は、以下のようなヒューマン・スキルを日頃から鍛えておくとよいでしょう。



○ トラブルを迅速に解決に導く臨機応変な対応力

○ 不具合の兆しを機敏に感じとる予知・察知力

○ 動作中の異音などささいな変化を見逃さない観察力

○ 原因特定の手がかりとなる設計図や図面を読み取るスキル

○ 安全に配慮した慎重な行動と、作業の丁寧さ



保全エンジニアだけでなく上記にあげた○のスキルは、専門職やエキスパートとして活躍するための必須のスキルともいえますが、例えば、夜道を歩いているとき、渡ろうとしている横断歩道の信号が赤だったとします。あなたは信号が青になるまで待ちますか? それとも、車が走っていないのを確認できれば、赤信号でも歩道を渡ってしまいますか?



△ 赤信号でも車が走っていなければ横断歩道を渡ってしまう

△コミュニケーションやチームワークはどちらかというと苦手

△ 整理整頓、掃除は苦手で、ゴミ捨てを面倒くさいと感じる

△ 5回の待ち合わせの時間に、3回程度(半分以上)遅れる

△ 納期や締切に遅れても、なんとかなると心の中で思っている

△ 部屋の床やベッドの上に、物がたくさん置かれている



いくつあてはまる項目がありましたか? これはあくまで一例ですが「赤信号でも車が走っていなければ横断歩道を渡ってしまう」人は、ひるがえれば世の中のルールや倫理を守らない心の油断がある……ことを意味し、それが業務に悪影響を及ぼす可能性があることにもなります。


会社の利益を損なう、人命を危機にさらす……。そんなことが起きないよう、上にあげた△の項目にひとつでもあてはまってしまった人は、早速今日から日常習慣を見直し、心の奥底に潜む“油断”や“慢心”をシャットアウトしてくださいね。


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