〈制御システム ✕ ITエンジニア〉365日、休み知らずで目的にそってシステムを自動コントロールする 神対応!?の制御技術 | エンジニアワークス

〈制御システム ✕ ITエンジニア〉365日、休み知らずで目的にそってシステムを自動コントロールする 神対応!?の制御技術

2023年7月9日、パシフィコ横浜国立大ホールで開かれた「自動制御世界大会」に、天皇、皇后両陛下がご臨席され、「自動制御の発展は、社会の持続可能性の向上に大きな役割を果たしています」と英語でお述べになられました。同大会には、約80カ国・地域から世界トップレベルのシステム制御に精通した約3000人が参加するもので、1981年に京都で開催されて以来、42年ぶりの日本開催となります。

自動制御システムといえば、すぐに思い浮かぶのが自動車の自動運転制御システムではないでしょうか。そのほかにも「駅の改札」や「電力・ガス・水道等」の社会インフラシステムから、「ロボットを活用した生産設備での自動制御」「大規模生産現場の搬送系統や空調系統の自動制御」など、さまざまなシーンで採用されています。

また最近は、水耕栽培や植物工場などの施設園芸でも、光、温度、湿度、二酸化炭素濃度などを自動コントロールする環境制御システムを採用する国や地域が増えていますし、一般家庭でも電子レンジ、炊飯器、ロボット掃除機といった家電に制御システムは搭載されています。

Contents

  1. 1. 制御システムの基本の“キ”
    【制御システムとは】
    【家庭で使われている制御システム】
  2. 2. システムのメリット、デメリット
    【制御システムのメリット】
    【制御システムのデメリット】
  3. 3. 制御システムにおける“機密性”の変化
  4. 4. 機密性の考え方が異なる、制御システムと情報システム
    【情報システムにおける3要素】
    ① 情報システムにおいて、最も優先度が高い〈機密性〉
    ② 情報システムにおいて、2番目に優先度が高い〈完全性〉
    ③ 情報ステムにおいて、3番目に優先度が高い〈可用性〉
  5. 5. 制御システムにおける3要素の優先順位
  6. 6. 進化著しい、自動車の自動運転制御システム
    自動車に装備された主要な制御システム

制御システムのキホンの“キ”


【制御システムとは】
水道、鉄道などの社会インフラから、工場、石油、化学、鉄鋼等の重要インフラ施設、自動車、輸送・精密機械、食品、製薬、ビル管理等に制御システム(Control System)は活用されています。これらのほとんどが24時間365日休みなく稼働していますが、人の手を介すことなく、目的に応じて機器やシステム全体を操る(コントロール)ことができます。

【家庭で使われている制御システム】
身近な例で制御システムをとらえてみましょう。エアコンであれば、室内の温度や湿度を察知して快適な室内環境に整えるために、自動で温度、湿度、風量、風向きをコントロールする機能は制御システムならではのもの。同じく、洗濯機も、ドラムにこれから洗う衣類を入れて「自動運転」のスイッチを押せば、センサーが汚れ具合を感知し、洗浄やすすぎの回数や時間、洗剤や柔軟剤の量をコントロール。これらの機能はすべて制御システムによるものです。

このように製品、機器、消費者の目的にそった機能を果たし、一連の動作を自動的に調整・作動させるものが制御システムであり、スイッチを入れたり消したりする多様な機器群やシステム活用されています。



制御システムのメリット、デメリット


7月3日に発表された6月の全国企業短期経済観測調査(短観)によると、新型コロナウイルス禍で先送りしていた設備投資に積極的に動いた企業が増加したことを背景に、2023年度の設備投資計画は、全規模全産業で前年度比11.8%増になったことが報じられました。

設備投資がプラスに転じた要因は、制御システムを搭載したAIやロボットによって現場作業をオートメーション化(整備投資)する動きによるもの、とする見方が強いのですが、設備投資を行ったメーカーの生産現場や中小企業のなかには人手不足が常態化しているケースも多く、このまま人手不足の状態を放置していれば、生き残ることすら難しく、やむを得ずオートメーション化を導入した背景も透けて見えます。

今日、労働力不足解消や生産性向上を目的に、制御システムが搭載された設備・機器を導入する企業が増えていますが、導入する側はもちろん、制御システムの開発・構築に携わるエンジニアにとっても、下記にあげたポイントがメリット、デメリットが重要なポイントになります。

【制御システムのメリット】
省人化…… 作業者(人)を介することなく自動で機械や機器が動くため、人手不足解消の手立てに
「つらい・きつい」を払拭…… 重労働などのつらい仕事を、制御システムでロボット化できる
品質の均一化…… 誤入力、操作ミスなどの人的ミスがなくなり、品質の均一化と高品質を維持できる
定型業務の高効率化…… ルーティンワークを、正確に、早く、少ない人手で処理できる
正確性と安全性を担保…… 誤発注や在庫管理ミスなどを防げるほか、事故・インシデントを防ぐ効果も
企業価値の創出…… 少ない人員で確実かつスピーディに仕事をまわせることで、新たな価値を生み出す効果も

【制御システムのデメリット】
「コスト…… 」
自社向けの制御システムを導入する際は、高度で複雑なプログラムを組むことになるため、
開発・構築にかかる初期費用が大きくなる。また、制御システムを取り扱う専門業者や
専門知識を有したエンジニアや、運用後の保守や、トラブルシューティング時も、
その専門性からある程度のコストを想定する必要がある

「リスク……」
制御システムは、自動的に機器やシステム全体をコントロールしてくれる利便性がある半面、
機器という特性からセンサが壊れることで意図しない誤作動やトラブルが生じるリスクもある



制御システムにおける〈機密性〉の変化


先日(7月4日)も、名古屋港へのサイバー攻撃が報じられましたが、このサイバー攻撃を仕掛けた世界最大級のハッカー集団は、セキュリティ対策が脆弱な企業や組織に手当たり次第に侵入を試み、その手口にかかった攻撃先にデータの暗号化や身代金を要求しているという乱暴かつ悪質なもので、ウイルスに感染するとプリンタから数百枚の脅迫文が自動的に印刷される手口から、ハッカー集団が特定されたとも報じられています。

ハッカー集団が特定されたものの、このサイバー攻撃によって国内トップクラスの貿易量を誇る名古屋港はコンテナターミナル内で運用するシステムに障害が発生し、荷物の積み下ろし作業(コンテナ数 約1万5000本)を待つトレーラーが長蛇の列をつくり、物流は大混乱に陥りました。加えて、予定どおりに荷物が届かないことで作業停止や売上減少を余儀なくされた工場や商店が続出する事態に。

こうした事例のように、多くの人々に多大な影響をおよぼすサイバーテロによるシステムに障害は、莫大な損害や被害が発生する卑劣な犯罪ですが、これまでの制御システムは、ベンダー独自のOSやプロトコルなどを使って構成されたものが多く、他のネットワークと相互接続することが少ない傾向にありました。

そのため、セキュリティに関してリスクはないと考えられていたのですが、インフラ施設や工場などの制御システムをターゲットにした身代金要求ウイルスなどのサイバーテロが相次いで発生していることから、制御システムにおけるセキュリティの取り組みは大きく変化。

制御システムが誕生して以降、「セキュリティ対策は取り立てて必要ないだろう」という考え方が数十年前まで続いていたのですが、多数の制御システムのセキュリティインシデント事例が報告されるようになったことで、あらためて制御システムにおける〈機密性=セキュリティ〉が重要視されるようになったのです。



機密性の考え方が異なる、制御システムと情報システム

コンピュータやネットワークなどを使用して情報を取り扱うコンピュータシステムを指す「情報システム」では、〈機密性〉〈完全性〉〈可用性〉の3要件が重要とされ、この3要件を満たした情報システムは適切な管理体制がとれているという指標にもなります



【情報システムにおける3要件】

① 情報システムにおいて、最も優先度が高い〈機密性〉
情報漏洩、内部告発・暴露等により、その情報システムを使用する企業が大損害を被ることや、その企業の価値を貶めることになりかねないため、「情報漏洩などの事故を防ぐセキュリティ対策」は情報システムにおいて非常に重要な要件になります。



② 情報システムにおいて、2番目に優先度が高い〈完全性〉
情報システムの命である情報やデータに誤りがあってはならないという考え方や情報資産をきちんと管理できていないことが企業の価値を貶めることにつながりかねないため、「情報に間違いや欠けがなく、最新情報である」ことが重要な要件になります。



③ 情報システムにおいて、3番目に優先度が高い〈可用性〉
自然災害や重大トラブルでサーバがダウンし、データへのアクセスができなくなった際に、「即座にデータへのアクセスが復旧できるようにする」ため、日頃から人的・組織的管理策を講じることが重要な要件になります。



制御システムにおける3要件の優先順位

情報システムの開発時の重要要件は優先度の高い順に①〈機密性〉②「完全性〉③「可用性〉となります。 一方の制御システムでは3要件の順序が入れ変わり①〈可用性〉②〈完全性〉③〈機密性〉になります。



制御システムにおける優先度のなかで〈可用性〉が最も高い理由は、24時間休むことなく稼働している社会インフラや重要インフラ施設がシステム障害などの要因によって停止することになれば、社会機能が麻痺し、甚大な被害・損害が発生しかねませんし、場合によっては人命が奪われる事態も起こり得ます。
そうしたリスクを考慮し、制御システムの開発時の最も優先すべき要件は、「いかなる状況においても、稼働しているシステムが停止しない=〈可用性〉」になり、この〈可用性〉を100%担保したうえで〈完全性〉〈機密性〉を維持・管理することが求められます。



進化著しい、自動車の自動運転制御システム

カーボンニュートラル社会や持続可能な社会を実現するため、安全性の向上、利便性・娯楽性の向上などを目的とした自動車制御システムの進化が著しい今日ですが、車に搭載された制御システムを司るのがセンサです。

運転席に座ってハンドルを操作しているだけではセンサを目にすることはほとんどありませんが、車の走行性、安全性、快適性、通信・娯楽性等の機能は数多くの制御システムで成り立っていて、これからは「走る半導体」ならぬ「走る制御システム」と呼ばれるようになるかもしれません。

自動車に装備された主要な制御システム
【パワートレイン】
エンジン、電気モータ、クラッチ、トランスミッション等の制御、排ガス・燃費系の制御

【車両】
走る、曲がる、止まるの自動運転統合制御、電動車両統合制御、制動安定制御、サスペンション・ステアリング制御

【ボディ制御】
エアバッグ、周辺監視、パワーウインドウ、ヘッドランプ光軸、電動ミラー、電動パワーシート、電動パーキングブレーキ、キーレスエントリ、オートスライドドア等の各制御

【情報通信】
GPS、カーナビゲーション、ジャイロセンサ、加速度センサ、CAN(Controller Area Network)ネットワークなど

これら膨大な制御システムは自動車業界を中心とした多領域で活躍するエンジニアによって開発された技術であり、それらの技術は分秒単位で進化を遂げています。

自動車専用の制御システムの開発を専門とする企業の求人を見ると、「エアバッグ、トランスミッション、車線維持システム、車間距離制御システムなどの制御システムの開発」「運転制御システムの機能開発および推進計画立案」「大手自動車メーカー用制御システムのソフトウェア開発」「ハイブリッドカーにおける電子制御システム」「電気制御設計・デバッグや機械装置設計などのエンジニア業務」など、多種多様な業務内容が掲載されています。さらに業務につくうえで有利な技術や経験も、組込みソフトウェア開発から電気電子、機械、流体、熱、化学、工学、半導体と多種多彩です。

——スイッチをオンにすれば部屋の照明が灯り、オフにすれば消灯が消えることと同じ手軽さで、今後は制御システムが当たり前のように私たちの生活になじんでいくことでしょうし、豊かで便利な社会に欠かせないシステムになっていくはずです。
AI、ロボットが私たちの暮らしに違和感なく溶け込もうとしているいま、自動車業界と同じく多彩な産業・業界で、制御技術を学んだエンジニアが求められていて、そのニーズはさらに拡大すると見込まれています。



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